投稿者: daisuke.s

  • 物件の特徴を活かした流通性の高い間取り?

    物件の特徴を活かした流通性の高い間取り?

    売地の販売と参考プラン

    「土地買いませんかー?」
    って紹介するだけではなかなか売地は売れません。
    そこで、建築会社さんに参考プランを作ってもらって買主様が購入後の建築をイメージしやすいように準備をすることが多いですよね。
    私も売地の販売を行うにあたり、とある建築会社さんに参考プランを作ってもらいました。
    お相手は建築のプロですから、まずはお任せで発注することが多いです。
    届いた参考プランがこちら↓

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    1回目に届いた参考プラン

    ん~…。
    この物件は第一種低層住居専用地域に指定されている閑静な住宅街にありました。周辺にも注文住宅が多い町並みで、地積40坪の整形地に南面道路だったこともあり、届いた参考プランはちょっともったいないなという印象を受けました。
    そこで、建築会社さんにアポをとり、打ち合わせをすることにしました。

    建築会社さんへの要望

    1. 採光・日当たりに支障がないのでリビングを1階にもってきてほしい
    2. キッチン、洗濯機置場等水回りの動線を良くしてほしい
    3. 全居室南向きにできないか?
    4. 北側斜線側には収納スペース等を置けないか?
    5. 敷地周りにスペースがあるなら2台分の駐車スペースを確保してほしい

    その他、細かい箇所のやりとりはたくさんありましたけど、概ねこのような要望をお伝えし、建築会社さんにもご理解をいただき、改めて参考プランを作ってもらうことになりました。
    そして改めて届いた参考プランがこちら↓

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    2回目に届いた参考プラン

    私は、自己満足で要望を出したわけではなく、新築戸建・中古戸建の内見や取引を数多く経験してきた中で物件の特徴を活かした流通性の高い間取りにしてもらいたいと考えて要望を出しました。
    まあ、自分が住むわけではないので、いったんこの参考プランを携えることにして、あとは、売地がうまく売れてくれればいいなと…。

    参考プラン掲載後の販売活動

    参考プランを広告やポータルサイトへ掲載して約1か月。
    とあるハウスメーカー系の不動産会社さんから資料請求のお問い合わせがあり、物件調査資料を全てお送りした後、現地をご案内させていただきました。
    そして、数日後、購入申込みが入り、申し分ない購入条件であったため、無事に売買契約締結となりました。
    こんなにとんとん拍子でいくとは!
    弊社の依頼者である売主様にも喜んでいただけました。

    もしかしたら、参考プランを掲載していなくても反響があったかもしれませんし、私の主観が強いプランだったので売却活動にどう影響が出るのか不安もありましたが、最善を尽くすという意味では参考プランを練って掲載してよかったと思いました。
    また、共同仲介案件となったため、建築工事の発注には至りませんでしたけど、参考プランを作成していただいた建築会社さんには感謝申しあげます。ありがとうございました。

    これから注文住宅をお考え皆さまは、自分の理想を間取りに詰め込むだけではなく、物件の特徴を活かした流通性の高い間取りという視点も持たれてはいかがでしょうか?

  • 買主様向け④|買主様へ説明をしている姿勢が感じられない宅建士

    買主様向け④|買主様へ説明をしている姿勢が感じられない宅建士

    重要事項説明に関する記事は、あえて読みやすさにこだわらない方針で書いてきました。
    「つまらない」「読みにくい」という感想があることも、動画等でわかりやすく解説している人がいることも承知しています。
    しかし、重要事項説明書を棒読みするだけで買主様へ説明をしている姿勢が感じられない宅建士がたくさんいますので、字面や書類の雰囲気に慣れてもらい、疑問点や不明点に気付く力をつけて、棒読み宅建士に対して遠慮なく質問できるような構成にしたつもりです。
    不測の事態が起こった際に「なんで説明を聞いているときに確認しなかったんだ」と言われないようにしてくださいね。

    重要事項説明書のひな型を使って、私が実践している重要事項説明で仲介業者へ確認すべきポイントも最後になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    損害賠償額の予定または違約金に関する事項~備考

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型
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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    まず、売主様もしくは買主様が売買契約において約束したこと(物件を引渡す・売買代金を払う等)を守らなかった場合の違約金(損害賠償額)について説明があります。違約金請求までの流れはこの手順をご参照ください。

    1. 相手方が約束を守ってくれない
    2. 相手方に約束を守ってくれと伝える
    3. 約束を守ってくれるか期限を決めて待つ
    4. それでも約束を守ってくれなければ契約解除に進む
    5. これを理由に契約解除することにつき違約金(損害賠償額)を相手方へ請求する。

    まずは買主様自身が売買契約において約束したことを守れるか確認しながら説明を聞くようにしてください。

    次は、宅建業者から物件を購入する場合の話で、売主様が宅建業者である場合には、宅建業法に基づき様々な制限がありますので、手付金の授受等について宅建業法違反がないか買主様自身でも確認しながら説明を聞くようにしてください。

    その次は、融資利用の特約をつけて売買契約を締結する場合の話で、融資先や融資条件の確認と合わせて「融資承認期日」と「融資利用の特約に基づく契約解除期日」の違いを理解し、いつまでに融資の承認を得なければならないのか混同しないようにしてください。

    その次は、売主が、売買契約後の契約不適合(欠陥や不具合等)責任を果たすために保険に入っていればその説明があります。特に新築住宅を購入する際は、詳細な説明がありますので、不測の事態に備えてよく説明を聞くようにしてください。

    その次は、売買契約~残金決済・引渡しまでの間に売主様が測量を実施し、売買契約書に記載の地積と差異が生じた分を売買価格で調整する場合の話です。購入申込み時や交渉時に仲介業者から説明を受けていると思いますが、買主様の購入目的や資金計画に影響を及ぼす内容ですので改めて内容を確認してください。

    支払金または預り金の保全措置や割賦販売は私が不動産業界に入ってからは経験がありませんし、一般の方の不動産取引では採用されていないようなので、この分野は気にしなくていいと思います。

    そして、最後にこの重要事項説明書に添付される資料の説明があり重要事項説明が終了となります。添付資料の内容も頭に入れておくようにしてくださいね。

    ただし、物件や取引の内容によって買主様へ説明する内容は宅建業法で定められた説明項目に留まらずまだまだ説明事項がたくさん出てきます。
    「その他重要な事項」「備考」に説明が書いてある場合は、ここにも買主様の購入目的や資金計画等に大きな影響を及ぼすことが書かれていますので、最後まで頑張って説明を聞くようにしてください。

    区分マンションの購入で確認するポイント

    これまで記事に使ってきた重要事項説明書ひな型は土地戸建用のものであり区分マンションに関する項目がありませんでしたので、区分マンションについても少し書きたいと思います。
    区分マンションは管理を買う時代とも言われるようになりました。
    私がマンション全体の管理について確認しているポイントを箇条書きにしましたのでお役立てください。

    1. 管理費・修繕積立金・その他維持費の金額および改定予定
    2. 管理費・修繕積立金・その他維持費の滞納額(対象住戸・全体)
    3. 大規模修繕工事の履歴および実施予定
    4. 長期修繕計画表の有無
    5. 共用部分等の修繕履歴
    6. マンション全体の管理を外部の管理会社へ委託しているか否か
    7. 委託していればその管理会社の内容
    8. テレビの視聴方法
    9. インターネットの利用方法
    10. 駐車場の空き状況・駐車できる車の制限・使用料
    11. 駐輪場(バイク置場)の空き状況・駐輪できる自転車の制限・使用料
    12. 住戸の用途制限(最近は民泊の可否が話題ですね)
    13. 住戸でリフォーム工事を行う際のルール
    14. ペットの飼育可否と飼育細則の内容
    15. その他、管理規約において買主側の購入目的や資金計画に影響を及ぼす内容がないか

    マンション全体の管理を外部の管理会社へ委託していれば、仲介業者はその管理会社から上記項目に関する報告書を入手していますので、重要事項説明の前に見せてもらい確認しておくのがよいでしょう。
    また、総会議事録も入手している場合がありますので、こちらも可能であれば確認しておきましょう。

    最後に

    私が宅建士になって初めて担当した重要事項説明のとき、買主様は居眠りをしていました。
    「これで説明したことになるんだろうか?」
    この思いから、ただ読むだけではなく、買主様が飽きないような説明を心がけるようになり、今では「説明が上手だった」「わかりやすかった」とお褒めの言葉を頂けるようになりました。
    仲介手数料はけっして安くありませんし、むしろ高いと感じている人の方が多いのかもしれません。
    これからも仲介責任の重みを感じながら仲介手数料を頂く分の仲介サービスを提供できるように努力してまいりたいと思います。
    最後までお読みいただきありがとうございました。

  • 買主様向け③|「聞いていた話と違う!」という展開にならないように

    買主様向け③|「聞いていた話と違う!」という展開にならないように

    引き続き、重要事項説明書のひな型を使って、私が実践している重要事項説明で仲介業者へ確認すべきポイントを書いていきますので、実際にその場面でご活用ください。

    今回は、建物に関することや契約解除に関することを中心に書いておりますので、不動産売買を予定している方はぜひ参考にしてください。

    宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造等~住宅性能評価を受けた新築住宅である場合

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    全日本不動産協会の重要事項ひな型

    このページは説明する項目が細かく分かれていますが、大きく分けると2つの説明項目になります。

    1. 建物に関する資料について
    2. 災害警戒区域や浸水想定区域について

    先に、浸水想定区域については、別に記事を書いていますのでそちらをご参照ください。なお、物件が災害警戒区域や浸水想定区域に該当しているか否かだけではなく近隣にそのようなリスクが潜んでいないかも確認するようにしてください。

    さて、建物に関する資料についてですが、下記のような状況は買主様の購入目的に影響を及ぼす内容ばかりですし、買主様の計画通りに建物を維持管理していけるのか、建替えできるのか、資金計画に影響が出ないか、これを意識して説明を受けてください。

    1. 3階建の物件なのに建築確認は2階建で受理されており検査済証も未取得だった
    2. 建築後に駐車スペースを住宅部分に変更していて延べ床面積の制限を超過していた
    3. 増築した箇所の登記申請が未了であった
    4. 「建築時の地積」と「改めて測量した地積」に差異が生じていた
    5. 防火設備等の定期検査を実施していなかったので、その後の検査で指摘事項が多かった

    宅建士は建物に関する資料や調査結果の全てに目を通したうえで説明してくれているはずですが、できれば事前に資料を入手して買主様自身でも精査したうえで重要事項の説明を受けた方がいいかもしれません。
    建物に関する資料や調査結果を買主様へ引渡してもらえる場合は、売買契約書の添付書類「物件状況等確認書(告知書)」にて売主様から説明がありますので、売主様側の準備が整っていればこの書類も重要事項説明前に確認させてもらいましょう。

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    全日本不動産協会の物件状況等確認書(告知書)
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    全日本不動産協会の物件状況等確認書(告知書)


    なお、建築中やリフォーム工事中の物件を契約するときは、設計図や仕様書等を細かく確認して、後から「聞いていた話と違う!」という展開にならないようにしてくださいね。

    取引条件に関する事項

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    全日本不動産協会の重要事項ひな型

    ここからテーマが変わり不動産売買に関する内容の説明が始まります。

    まず、売主様へお支払いする金額の説明がありますので、購入申込みの内容やその後の交渉結果と記載内容が一致しているか確認してください。

    次に契約の解除(売買契約後に起こり得る状況とその進め方)について説明があります。これは、売主様と買主様の合意事項になりますので、ひな型の定型文で進めなければならないわけではなく特約等により違う内容で契約することもできます。
    売買契約後に起こり得る状況のイメージはこんな感じです。

    1. 手付解除:売買契約後に売主様もしくは買主様が一方的に契約を解除する場合の話です。
    2. 引渡完了前の滅失・損傷による解除:売買契約後に自然災害等により物件が壊れてしまった場合の話です。
    3. 融資利用の特約による解除:売買契約後に買主様の融資審査が否決になり売買代金の支払いが難しくなった場合の話です。
    4. 譲渡承諾の特約による解除:土地権利が賃借権で、売主から買主へ賃借権を譲渡することについて地主の承諾を得られなかった場合の話です。
    5. 契約不適合による修補請求・解除:売買契約後に物件の瑕疵(不具合や欠陥)等が発見された場合の話です。
    6. 修補の遅滞を含む契約違反による解除:売主様もしくは買主様が売買契約において約束したことを守らなかった場合の話です。
    7. 反社会的勢力の排除に関する特約に基づく解除:売主様ならびに買主様が反社会的勢力であった場合、買主様が反社会的勢力に物件を使用させてしまった場合の話です。

    ひな型の定型文の他にも別の解除条項が売買契約書に定められていれば、その内容が追記され説明を受けることになります。
    私も契約解除になった案件を何回か仲介したことがありますので、明日は我が身と思い、売買契約後に起こり得る状況を想定しながら契約解除条項の確認をしてください。

  • 買主様向け②|優秀な宅建士は「現地調査」と「役所調査」を区別して

    買主様向け②|優秀な宅建士は「現地調査」と「役所調査」を区別して

    引き続き、重要事項説明書のひな型を使って、私が実践している重要事項説明で仲介業者へ確認すべきポイントを書いていきますので、実際にその場面でご活用ください。

    今回は、不動産の接道義務や埋設管に関することを中心に書いており、紛争事例の研修でもよく取り上げられる分野ですので、ぜひ参考にしてください。

    特に道路は、その種類にもよりますが、役所で入手した資料のみを根拠に、道路種別、道路幅員、接道の長さついて、勉強不足・調査不足のまま説明を行う宅建士に担当されたことがありましたので注意してください。

    敷地等と道路との関係

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    都市計画区域及び準都市計画区域内において建築物を建築する際は、建築物の敷地は幅員4m(特定行政庁が指定する区域においては6m。)以上の道路に2m以上接しなければなりません。ここでいう「道路」とは、単に通行の用に供されているというだけではなく、建築基準法に定める道路の種類に該当するものをいいます。
    役所に保管されている資料は、作成された時期によって現況と相違している場合がありますし、中には説明の根拠として不適格な資料もあるので、優秀な宅建士は「現地調査」と「役所調査」を区別して正確な説明をしてくれるんですよ。
    役所の資料に基づき前面道路幅員は4mと説明を受けたのに、引渡し後、現況幅員が4m未満であることが発覚し買主様の希望する建築プランが入らなかったという事例がありますから、この説明を受けるときは「現地を調べたのか?」必ず確認するようにしてください。
    なお、敷地等の道路との関係は、都道府県や市区町村の条例により制限が付加されている場合があり、建築基準法上の道路に接している物件でも買主様が希望する建築プランが入らないかもしれませんので、とにかく注意深く説明を聞くようにしてください。

    都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限~飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    今でこそネット社会となり比較的調査を進めやすい時代ではありますが、年々増えていく不動産取引の対象となる法令の数…。
    それぞれ、物件のある場所や買主様の購入目的によって該当する法令制限を説明してもらいます。
    該当する法令制限の内容を端折る重要事項説明書を見かけることがありますので、制限の内容までしっかり確認するようにしてください。

    次は「私道」に関する説明です。
    前面道路を役所が維持管理している場合でも、登記簿上の所有者欄に私人が記載されていることがありますので、私道所有者やその範囲等について説明してもらいます。
    私道は、その利用について私道所有者の承諾が必要となる場合があり、不動産売買においては、売主様にて「私道の通行および掘削に関する承諾書」を取得してもらい、買主様へ引き継いでもらう形が一般的ですので、決済条件も含めて理解するようにしてください。

    そして、飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況は、設備を利用できるか否かだけではなく、配管の敷設経路等も確認してください。
    敷地等と道路との関係と同じで、資料が作成された時期によって現況と相違している場合がありますし、中には説明の根拠として不適格な資料もありますので、関係各所で入手した資料のみを根拠に配管の敷設経路について説明する宅建士は要注意です。
    引渡し後に追加配管工事や配管トラブルが生じれば予期せぬ費用負担が生じますから、この説明を受けるときも「現地を調べたのか?」必ず確認するようにしてください。

    そもそも道路にしても埋設管にしても役所や関係各所が保管している資料は、重要事項説明の添付資料として作られたものではないのです。

  • 買主様向け①|仲介サービスの質って不動産会社や担当者によって…

    買主様向け①|仲介サービスの質って不動産会社や担当者によって…

    私は売買仲介歴が長いんですが、不動産買取業に従事していたこともあり、実際に買主、売主の立場で他社の仲介サービスを利用する側の経験も積んできました。

    仲介サービスの質って不動産会社や担当者によってばらつきがありますよね。

    そこで、不動産を買う時の購入申込み~売買契約までに、仲介サービスを利用する側として私自身が気を付けていることを記事にしましたので、不動産売買に慣れていない方のお役に立てれば幸いです。

    不動産の購入を申し込む

    購入申込みとは、物件の売主様(売却条件)に対して、購入の意思表示(購入希望条件)を伝えることをいい、購入申込みは、金額だけではなく、日程や決済条件等も記した購入申込書を提示するようにしています。

    決済条件も細かく書いた方が、売主様にも誠意が伝わり、交渉事があったとしても、円滑に協議が進んでいくような気がしているからです。

    ただし、一般の方だと決済条件を独自に判断することは容易でないと思いますので、私が仲介をする場合は、売買契約書のひな型を使ってこの通りに進めるのか否かを確認しながら決済条件を検討してもらっています。

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    全日本不動産協会の売買契約書ひな型
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    全日本不動産協会の売買契約書ひな型

    さて、購入申込み後に売主様と売買条件が合意したら、いよいよ売買契約を締結する流れとなり、宅建業者が売主や仲介の立場でいれば、売買契約締結前に重要事項の説明を受けていただくことになります。

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    重要事項説明書に記名押印すれば、実は説明内容を理解していなかったという主張が通りにくくなりますので、安易に記名押印してはいけません。

    重要事項説明書のひな型を使って、私が実践している重要事項説明で仲介業者へ確認すべきポイントを書いていきますので、実際にその場面でご活用ください。

    不動産の表示~登記記録に記録された事項

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    まず、売買の対象となる物件を特定する情報(物件が登記されていればその内容)の説明から始まります。
    この時に買主様は、物件の登記簿だけでなく、住宅地図、公図、地積測量図、建物図面、固定資産評価証明書等を確認しながら説明を受けるようにしてください。私は建築時の資料等もあれば、これらも確認しながら説明を聞くようにしていますよ。
    この作業により、土地の情報が現況と相違していないか、他に漏れている土地の筆がないか、建物の情報が現況と相違していないか、未登記建物がないか、このような事態に気付くことがあります。
    土地権利が借地権の場合は、土地賃貸借契約書等を確認しながら借地権の内容の説明を聞いてくださいね。賃借権の場合は賃借権譲渡承諾書の案文があるはずですから、これも事前に確認しておいた方がいいでしょう。
    なお、測量図は、測量図の呼び方と図示される内容が担当する土地家屋調査士によって認識が異なりますので、買主様が希望する測量図を準備してもらえるのか念入りに確認してください。

    次に、売主様が登記名義人(登記されている物件の所有者)と一致しているのか否か説明してもらいます。一致していなければ、売主様が売主(所有者)であることの裏付けを仲介業者がどのように確認したのかが大事なポイントになりますので注意してください。売主様と登記名義人が一致しない例としては、住所・氏名の変更登記が未了、相続登記が未了等があります。

    その下にある第三者の占有については、物件を誰かに貸している等の場合の説明事項です。物件を誰かに貸している状態で売買が進むのであれば、賃貸借契約の内容や賃借権負担付き売買はどういうものなのかについても説明してもらいます。

    そして、右ページに移動して、登記名義人および所有権や抵当権等の権利関係の説明を受けます。物件の引き渡し時に、売主様から買主様へ所有権移転できる状態か否か、抵当権や地役権等が設定されていれば、買主様はどのような状態で引渡しを受けるのか等を説明してもらいます。
    また、この内容は、重要事項説明の日に近い日付で取得した登記簿を基に説明を受けることが一般的ですので、何月何日現在の情報なのかも忘れずに確認するようにしてください。

    都市計画法に基づく制限、建築基準法に基づく制限

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    全日本不動産協会の重要事項説明書ひな型

    都市計画法や建築基準法の制限の内容は、買主様の購入目的や、将来土地の価値の増減に及ぼす影響が大きいため説明欄が広くとられています。
    東京23区は市街化区域ばかりなんですが、地域によっては建築物を建築しにくい地域や建築してはいけない地域がありますので注意してください。
    また、都市計画施設(都市計画道路による道路の拡幅等)や市街地開発事業(土地区画整理を施行すべき区域等)は、購入物件や周辺環境に影響を及ぼす場合がありますので、しっかりその内容を理解するようにしてください。

    次に出てくる建築基準法に関する制限について、私は、以下の観点で説明を聞くようにしています。

    1. 購入する物件で建築基準法違反の疑いはないか?
    2. 今後、建て替えを希望する場合に同程度かそれ以上のものが建ちそうか?
    3. 更地を購入する場合に希望する建築工事や造成工事ができそうか?
    4. 自分が希望する物件の利用方法について制限は生じないか?

    実際に建築計画がある買主様は建築士さんにお任せかもしれませんが、ここで説明を受ける建築基準法に基づく制限は最低限買主様に理解してほしい項目ですので、聞きなれない言葉や理解しずらい内容があれば遠慮せずに宅建士へ質問をして買主様の購入目的が達せられるか否か確認するように努めてください。

  • 購入した土地に建築プランが入らない

    購入した土地に建築プランが入らない

    先日受講した宅建士の法定講習会(宅建士証の更新)で取り上げられた紛争事例の続きです。

    第2種高度地区の規制により買主目的の延べ100平米の建物が建築できない説明をしなかった媒介業者及び重要事項説明に立ち会わず媒介業者の不十分な説明を看過した売主業者に損害賠償責任が認められた事例

    売主宅建業者Y2←売買契約→買主X
           ↘     ↙
            媒介業者Y1

    まあ、内容はそのままなんですが、この紛争では、

    1. Y1は重要事項説明書に第2種高度地区内であることのみを書いていた。
    2. Y2は重要事項説明に立ち会わなかった。

    この2点を裁判所から説明義務に違反した債務不履行だと指摘されたようです。

    つまり、Y1は、重要事項説明書に第2種高度地区内であることを書くだけでは足りず、制限の内容も書いてXへ希望に沿う建物を建築できないことを説明するべきであった。また、同席していれば補足説明できたのに説明不足の重要事項説明書を交付したY2にも責任はある。

    媒介業者が介在していても宅建業者が自ら売主となる場合は重要事項説明義務を免れませんからね。

    約300万円の解決金を支払うことにより和解したと書いてありましたので、Y1にとってもY2にとっても痛手だったのではないでしょうか。

    これは、業界の風習かもしれませんが、重要事項説明は宅建業者が買主様(借主様)へ行うことが法令で義務付けられているので、売主様(貸主様)を同席させないことは多いですよね。

    なのに、売主様(貸主様)からも重要事項説明書に記名押印をいただくことが多いですから、売主様(貸主様)は重要事項説明に同席するか、事前に重要事項説明書の内容を確認しておくことがのぞましいでしょう。
    (ちなみに弊社が加盟している全日本不動産協会の重要事項説明書は宅建業者から売主様にも説明すべき形式を採用しているようです。)

    やはり、トラブル事例の多くは、宅建業者の説明義務違反や不実告知によるものが多いですね。

  • 東京都内も大雨による浸水被害…

    東京都内も大雨による浸水被害…

    昨日は東京都内も大雨による浸水被害がありましたね。

    被害にあわれた方々へ心よりお見舞い申しあげます。

    先日、参加した宅建士の法定講習会(宅建士証の更新)でもハザードマップ等について解説がありました。

    市区町村が公表しているハザードマップのみでは調査が足りない場合があり、都道府県が公表している浸水想定予想区域図も確認した方が良いとの内容でした。

    なんと、都道府県の浸水想定予想区域が市区町村のハザードマップには反映されていないことがあるようでして…。

    市区町村によってハザードマップの精度にばらつきがあるって話だったんですが、ハザードマップは全国共通のルールに基づいて作成されているものと思っていたので寝耳に水でした。

    東京都の浸水予想区域図と過去の水害記録のページはこちらです。
    なお、東京23区は浸水履歴を独自で公表している場合もあります。

    浸水予想区域図|東京都の河川整備 大雨への準備|東京都建設局東京都建設局の浸水予想区域図(東京都の河川整備 大雨への準備)のページです。www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp

    過去の水害記録~浸水実績図~|東京都の河川整備 大雨への準備|東京都建設局東京都建設局の過去の水害記録~浸水実績図~(東京都の河川整備 大雨への準備)のページです。www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp

    そして、講習では、宅地造成及び特定盛土等規制法や特定都市河川浸水被害対策法に関する解説もありました。

    物件の近くに崖や河川がなくても、当該法令制限を受ける地域に指定されているため、物件の利用や建築工事等の制限が付加される場合があるので注意してくださいとのことでした。

    都市計画情報等インターネット提供サービス | トップ#www2.wagmap.jp

    特定都市河川ポータルサイト – 国土交通省水管理・国土保全局特定都市河川ポータルサイトwww.mlit.go.jp

    この他に、地震ハザードマップや土砂災害ハザードマップを作成している自治体がありますし、漏れなく調査したいところですね。

    また、個人的には、下水道台帳等をしっかり確認して、雨水が合流なのか分流なのか、何ミリ口径の配管がどのような経路で敷設されているのか確認して、汚水・雑排水も含めて排水計画がどうなっているのか調べておくのもお勧めです。

    下水道台帳案内|事業者の皆さまへ|東京都下水道局東京都下水道局の下水道台帳案内(事業者の皆さまへ)のページです。www.gesui.metro.tokyo.lg.jp

    私は、物件調査への意識がさらに高まりましたが、浸水履歴は不動産売却時の売主による告知事項の項目にもなっていますし、皆さまも不動産取引の当事者となる場合はご用心ください。

  • 手付金500万円を騙し取ったことがばれて

    手付金500万円を騙し取ったことがばれて

    宅建士の法定講習会(宅建士証の更新)で取り上げられた紛争事例のご紹介です。

    土地の所有権者と売買契約を締結したとする転売人に成りすました者と売買契約を締結し、手付金を騙取された買主宅建業者の損害につき、媒介業者に善管注意義務違反による賠償責任が認められた事例

    所有者A←?→転売人B←売買契約→買主X
                 ↑   ↑
                立会い 媒介契約?
                 ↑   ↓
                 X側媒介業者Y

    A所有の不動産をBが勝手にXへ売ろうとして手付金500万円を騙し取ったことがばれて、Xが、手付金を騙し取られたのはYが調査を怠ったからだとYを訴えたという事例です。

    Yは、売買契約書等に記名押印しただけで媒介契約書は作成しておらず媒介契約が成立していないので、AB間の一次売買契約について調査業務を負う必要はないと主張したみたいなんですが、裁判所は、責任割合に相当するYの損害賠償責任がある旨の判示をしたようです。

    手付金500万円であれば売買価格は5,000万円~1億円くらいの取引だったんでしょうか。仮に正規の仲介手数料を受領していたとしてもYの損失は大きいですよね。

    またXがBに対して何か行動を起こしたのかも気になります。Yを善管注意義務違反で訴えて手付金を取り戻すことを優先したのでしょうか。

    重要事項説明書や売買契約書へ記名(押印)する仲介業者(媒介業者)は責任重大であり、何かトラブルが起きれば、仲介業者はその責任から逃げられないということを再認識させられた講義でした。

    (なので真面目に仲介業やっている宅建業者へは仲介手数料を払ってあげてくださいね。)

    長いこと不動産業界で働いていると、売買契約書に仲介印だけ押してほしいと依頼を受けることはあり、その内容によっては、依頼をお受けすることもあります。

    綺麗ごとばかり言っていては商売にならないとの意見もありますが、不自然な儲け話には用心しないといけませんね。

  • 売却益が出るなら自宅を転売しようと

    売却益が出るなら自宅を転売しようと

    東京都心部でも不動産の価格は上昇し続けていますね。

    当初は終の棲家として購入した物件も売却益がでるならと買い替えを検討する方が多いのではないでしょうか。

    昨日の宅建士の法定講習会(宅建士証の更新)にて宅建業者が税制上の適用要件について間違った説明をした事例が、わかりやすいように簡略化して紹介されていて、改めて税制は複雑で税理士等の資格がなければ触れてはいけない分野だなと再認識させられました。

    1. 購入した築後21年経過の軽量鉄骨造の既存住宅が当時の各種税制上の特例を受けられなかったのは、媒介業者の説明不足であったとして、予定していた税額より増えた差額を損害賠償請求された事例
    2. 取得したマンションの住宅ローンの年末残高がなかったため、「居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の適用を受けられなかったのは媒介業者の間違った説明によるとして、その税の差額を損害賠償請求された事例
    3. 媒介業者が、居住用財産に関する譲渡所得税について誤って説明したため、その税の差額を損害賠償請求された事例

    皆さんにも思い当たる節はありませんか?

    売却益が出るなら自宅を転売しようと安易に計画をたてていませんか?

    特別控除や軽減税率等の特例は「適用要件」がありますし、複数の特例の「重複適用が認められるか否か」も事前に税務署や税理士等の専門家へ相談しておくべきです。

    私自身、お客様へ税制の仕組みや過去に別のお客様から聞いた経験談をお話しすることはありますけど、宅建業者に現行の税制を基に税金を計算できる能力はありませんし、その権限も与えられていませんので、お客様も宅建業者もご用心ください。

    課税の繰り延べなんて説明を聞いても難しいですよね。

    もうすでに自宅の買い替えや売却で動き出している方は、お金の流れや税金について、いったん立ち止まって再確認してみてはいかがでしょうか。

    マイホームを持ったとき|国税庁www.nta.go.jp

    No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁www.nta.go.jp

    No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁www.nta.go.jp

    No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁www.nta.go.jp

    No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁www.nta.go.jp

  • 居眠りしている人も受講したことになるんでしょうか?

    居眠りしている人も受講したことになるんでしょうか?

    本日は、宅建士の法定講習会(宅建士証の更新)に行ってきました。

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    しかし、受講態度の気になる人が散見されましたね。

    居眠りしている人も受講したことになるんでしょうか?

    まあ、赤の他人をそこまで気に掛ける必要もないですし、宅建士だからといって全員が不動産業界で働いているわけでもないですし…。

    事前に撮影された動画を視聴するだけの講習なので、私も眠気に襲われましたけど、講習はトラブル未然防止やトラブル事例に関する内容が中心で、聞いておいて損はないと思い、全課目を漏らさず聞いてきました。

    実際にテーマを深堀りする展開があって新しい気づきはありました。

    今年は、運転免許証の外免切り替え問題が話題となりましたが、更新に値しない人にも新しい宅建士証を交付してしまう現行の宅建業法はまだまだ改正の余地があるなと感じた1日でした。